証券会社の手数料も自由化され、大口の機関投資家向けの手数料はあっという間にタダに等しいものになってしまった。 フィナンシャル・テクノロジーは、当初、金融機関自身が抱えるリスクの管理に用いられた。
アセット・ライアビリティ・マネジメント(ALM)という考え方である。 アセットは資産、ライアビリティは負債、マネジメントは管理、つまり、ALMは「資産と負債の管理」を意味する。
これを説明するために、ALMを欠くとどういうことになるか、手っ取り早い例を示そう。 日本の生命保険業界である。
生保は、銀行、建設、デパートなどが抱えるバブルの後遺症とはまったく違う種類の病理を抱えている。 バブルの後遺症は、要するに、とんでもない高値で買った土地の価格が下がった、ということに過ぎない。
一方、生保の破綻が続いたときに、その原因として言われた「逆ザヤ」は、まさしく、ALMの問題である。 リスクを取って市場の変動から利益を取ることを目指すようになったのである。
一方、80年代、財政悪化に悩まされたアメリカ政府はNASAの予算を削減し、あぶれた人材がウォールストリートに流れてきた。 ロケット・サイエンティストと呼ばれた彼らが呼び水となって、理数系の優秀な人材が金融機関に集まり出したのである。
わかりやすい言葉に直せば、アセットは「受け取りの約束」、ライアビリティは「支払いの約束」である。 現金と約束は逆の方向に流れる。

生保は、契約者から現金で保険金を受け取る。 同時に、契約者に対して、「支払いの約束」をしている。
具体的には、受け取った保険金を「予定利率」で運用する約束である。 90年代以前に加入した契約者の「予定利率」は、おおむね5%で、今日の金利水準に比して著しく高い。
しかし、約束であるから、生保は、契約者に、毎年「予定利率」の5%を払い続ける義務を負う。 これが生保にとっての負債、ライアビリティである。
一方、生保は、集めた保険金をさまざまな方法で運用して増やそうとする。 運用とは、現金を「受け取りの約束」と交換することである。
たとえば、国債を買えば、国から毎年利子を受け取る。 企業にカネを貸せば利子を受け取る。
土地やビルを買えば家賃収入を受け取り、株を買えば配当金を受け取る。 土地と株は、家賃、配当金の他に、それ自体の価格が変動して、値上がり益をもたらすこともある。
これらが生保の資産、アセットである。 アセットから得られる受け取りがライアビリティの支払いより大きければ、生保は儲かる。

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